吹替え職人・栗田貫一 ―マイケルに命を吹きこんだ7シーズン― “任務完了”最後の一日に密着

大人気アニメ「ルパン三世」の声優として知られ、「バーン・ノーティス」では主役のマイケルの声を担当している声優・栗田貫一。ついにファイナル・シーズンを迎えた「バーン・ノーティス」の吹替え最後の一日の“任務完了”までを密着しました。5回にわけて配信するスペシャル動画をお楽しみください。

9/3(水)SPECIAL INTERVIEW

最後の仕事(番外編)
スペシャル・インタビュー

栗田貫一ついにファイナルを迎えますが、率直な感想をお願いします。
せっかく脂が乗ってきたというか、ほんとにいいチームワークで円滑で、何一つ問題がなくて。製作チームが集まれば(収録を)始めて、気が付けば終わっちゃうみたいな。それでもいい緊張感の中、スタッフや声優の皆が今や家族みたいになっていて、「これがいつまでも続けばいいのに…」って感じがしていたら、ファイナルになっちゃったって残念な気持ちがありますね。しかも今日の収録が最後で。
よくフィオナ役の雨蘭ちゃんが、悲しいシーンとか感動的なシーンがある週の何日か前に「リハーサルやってて、泣いて出来ない」なんてメールを送ってくれました。「泣いちゃって先に進めない」とか。多分、今週そのメールが無かったってことは相当泣いたんだと思う。メールさえ打てないくらい、終わっちゃうことが悲しくて。多分、感極まって来るんじゃないかな。
本当にマデリン役の谷さんはママさんだと思っているし、雨蘭ちゃんは彼女だと思っているし、サム役の江原さんは兄貴だと思っているし。ジェシー役の山野さんは弟というか友達だと感じるし…。なんて言うんだろう、“スタッフ”じゃなくて“いい人達”に巡り合えたな。まさに財産ですよね。ドラマの中の設定だけではなく、それ以上のものを僕は感じる。

ファーストシーズンのVOL.1が2009年11月13日に発売してから約5年経ちましたが、
主人公のマイケルの声を演じる上で、栗田さんの心境の変化はありました?

最初は「どんな声を出せばいいのか?」という所から始まったんですよね。この現場に初めて来た時に、ジェフリー・ドノヴァンの声をやろうと思って来ている訳ですよ。あの俳優の声をイメージして声を出すのが、今までものまねという仕事で培った“性”みたいなものなんです。松山千春さんの歌をかけられたら、真似しなくていいと言われても松山千春さんになっちゃったりする様な。
だからジェフリー・ドノヴァンを見ていると、その声を出そうという意識に自然になっちゃうみたいな所があってスタートしたんだけど、サム役の江原さんもフィオナ役の雨蘭ちゃんも、全くその俳優自身を無視した、破壊的な第一声で(笑)。「なんだ、この人たち?」というか「えーー!?」みたいな第一声だったんです(笑)。その驚きは今でも覚えていますね。「その声、おかしいだろ?」「違うじゃん!」みたいな。ドキッとしました。
今思えば簡単に言うと僕はすごく何にも面白くないことをやろうとしていた訳なんです。だから、どうしてもマイケルの声を“探した”時期がありました。やっと、シーズン4くらいから「あっ、この声でいいんだ」っていうのがだんだん分かってきましたね。最初は迷った時期がありました。
例えばですよ、僕がルパンの声しか出せない、普段もルパンの声のする人間だとしたら、それで呼ばれたのだからマイケルをやってもルパンでいい訳ですよ。言い方がルパンにならなければいい。だから、江原さんにしても雨蘭ちゃんにしても、その声の人を呼んでる(キャスティングしてる)訳じゃないですか。「声を変えてくれ」とはならない訳ですよ。僕はそれが分からなかった。要は「自分が出す声が誰に似ているのかな?」というのをいつも考えて生きてきた人間だから、「どんな声がいいですかね?」みたいなタイプな訳ですよ。他のみなさんとそもそものスタートが違う訳なんです。小林清志という人は簡単に言えばあの声の訳だから、どの現場に呼ばれても役柄とか声の張り方は違うだろうが、声はアレでいい訳ですよね。それがその場では欲しいわけじゃないですか。僕はもしかしたら違うのかもしれないという所から始まる。
『バーン・ノーティス』のマイケルの声優をこの5年間務めたことで、今後は「どこの現場に行ってもこれでいいよっていうことでやれるかな」っていう第一歩を踏めたって感じかな? これちょっとうまく言えないけど。伝わります?(マイケルの声は)「何を求められているのか分からない」というところから始まっているんです。

5年間『バーン・ノーティス』と接してきて、思い出深いエピソードはありますか?
ジェフリー・ドノヴァン本人が来日したとき、まさにこの場所(都内レコーディング・スタジオ)でアフレコをやってもらったんですよ。本人が自分の声をやりたい!て言うからやらせてみたら、「(英語で)マイネーム マイケル・ウェスティン…」って始まったから、「ちょっと、ちょっと!お前、それ日本語じゃないじゃん!」ってダメだしして(笑)。
「(英語発音の) マイケル・ウェスティンじゃなくて、(日本語で) マイケル・ウェスティンだよ!」、「マイネーム~じゃなくて、俺の名は~だよ!」って言ったら「オレノナハ?」とか言ってて「オレノナハ?じゃない、俺の名は!」のやりとりが思い出深いですね。今思えばね、相手はハリウッドスターだからねぇ~。お前呼ばわりしちゃったからね(笑)。「なにやってんだ、お前。下手だな~」とか(笑)。
その来日の時、雨蘭ちゃんがただでさえ背が大きい女性なのにね、和服の着物着て出迎えて、「日本人は和服を着て出迎える。これが礼儀だ」みたいな、またデカい和服になっちゃってるんだけどね。それで「ハグ・プリーズ!」とか言って男よりデカいよ!なんてね。そういう思い出がありますね(笑)。 その時ジェフリー本人から「冒頭のナレーションの部分は誰に言う訳でもなく、遠くにいる人にスパイはこうなんだよって言うことを心掛けて喋っている。だから、栗田さんもそういう感じでやってみてください」ってアドバイスをもらいました。「解説になっちゃダメだ」みたいな。かといって、ただモノローグみたいに喋る訳でもないので、その辺が難しいよってジェフリー本人も言ってました。
今思うと、最初のシーズンの頃のアフレコした声を聞くとなんか可愛らしいね。真面目でキチンとしていた。「スパイは○○しなきゃいけない(棒読み)」みたいな、なんて言うのかな…、正しいんだけど可愛く聞こえちゃう。今の「スパイは○○しなきゃいけない(マイケル声)」っていうのと全然違う感じがありますね。
それはね、向こう(ジェフリー・ドノヴァン自身)だって多分変わったと思うよ。5年もやっていればね。それでいいの。その時、高橋剛(本作のアフレコ演出担当者)って人がOK出しているからそれでいいの(笑)。

栗田さんご自身が『バーン・ノーティス』以外でハマった海外ドラマはありますか? 最近のものでも、昔のものでも構いません。 これを始めて以降、FOXチャンネルとか海外ドラマ系を家でも見る様に自然になってきちゃって。「他の声優さんたちはこうやっているんだ~」とか「あっ、この声、この間来てくれた○○さんだ」と分かる様になってきて、そういう逆の楽しみが出てきて。「『BONES』と『Dr.House』は同じじゃん」とかね。聞いてみたらやっぱり木下さんがやっているんだーとかさ。本人と一致して聞こえるようになってきて、見方が変わった。だから吹替で見る楽しみがあるんだなって。
家で一杯飲んで横になりながらTV見ると、字幕読めなくなってくるんだよね(笑)。やっぱり吹替で聞くと楽しいよね。やっぱ海外ドラマは吹替だよ!

最近思ったんですけど、この『バーン・ノーティス』は「本当に僕でいいの?」みたいな部分から始まってるなと。今まで(声優界で)主役を務めてきた人、マイケル・ウェスティンの声で台詞をきちんと喋れる人、つまり、今までちゃんと(声優の仕事を)やってきた人がマイケル役をやってもよかった訳じゃないですか。そういうタイプで良かったわけですよ。そしたら今とは全く違う作品になってたんだなって思います。多分横に江原さんもいないし、雨蘭ちゃんもいないんだろうなって。それっぽい人で出来ちゃう。それだとどうだったんだろうなって思います。吹替の凄さって、すごく独特な声を出す人達が何人かいると、もうその人の声じゃないと聞けなくなっちゃうじゃないですか。だから逆だったんだなって。
僕はジェフリー・ドノヴァンに合わせたけど、考えてみたら、全員がそっちよりに合わせたら、何も面白くない吹替作品だったんじゃないかなって思います。とんでもない、全く(イメージとは)違う声の人達でやった方が面白い時もあるんだなと。『刑事コロンボ』なんて、みんな吹替のイメージしかないじゃないですか。もうそれじゃないとダメになっちゃう感じ? だから吹替は凄いなって。
まぁ、大人の言い方すると、お金をかければなんでも出来る。凄い声の人を集めちゃえば凄い作品になっちゃう可能性があるってことですよね(笑)。分からないけど、八奈見乗児さんとか、滝口順平さんとか、納谷悟朗さんとか、山田康雄さんとか、もう誰が聞いても一言で分かっちゃう人達集めたら凄いドラマになっちゃうでしょうねー。

これからファイナルシーズンを迎える『バーン・ノーティス』ファンの皆様にメッセージをお願いいたします。
地方の仕事で熊本に行った時に飲み屋さんのお姉ちゃんが「ルパンやって!」って言うのかと思ったら「マイケルやって!」なんて言うから「え!見てるの?」って聞いたら、「見てます!『バーン・ノーティス』最高!」なんて話してたのが、最近だと銀座のお姉ちゃんが「マイケルやって!」とか…。だんだん東京に戻ってきたみたいな感じがしてます。地方から逆に配信されてきたみたいな感がありますね。「シーズン6まで見たんですけど、シーズン7は出ないんですか?」とか。こういうじわじわっと出来てきた人気がね、いいんじゃないかと。
だから、初めて見る人もね、まぁもちろんシーズン1から見た方がいいのかもしれないけど、金太郎飴みたいになっているので別にシーズン2から見たって構わないと思います。シーズン1を見てないと分からない話じゃないし。ただし、僕的にはシーズン1の自分の声は可愛いので、可愛いのを見てからカッコいいのをね、見た方が自然じゃない?
内容も最初の頃はコントチックな、銃を出来るだけ撃たないで変身とか、そういうので事件を解決していく面白さがあって。後半はシリアスなスパイアクションになってきたんで、アフレコで遊べる余地があまりなくて少し寂しくもあったんだけど(笑)。
まぁ、この機会にぜひとも最初から見ていただいてね。「シーズン途中に、茨城弁もやってたんだー!」みたいな。楽しみにしていただければと思います。

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9/3 SPECIAL INTERVIEW
最後の仕事(番外編)スペシャル・インタビュー

9/5 EPISODE.5
最後の仕事(5)すべてを終えて

PROFILE

栗田貫一 (マイケル役・吹替)

1983年フジテレビ系「日本ものまね大賞」にてデビュー。ものまね四天王としてものまねブームの中心的存在となる。以後、TV・舞台などで活躍。1995年より人気アニメ『ルパン三世』の声を担当している。

栗田貫一