キミは日本語吹替の魅力を知っているか?実力派声優が魅せる【吹替】の真実を堪能せよ!

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とり・みきの吹替どうなってるの #03 最終回 録音技術とハード面から見た吹替史

まず前回からとても長い時間が経ってしまったことをお詫びします。

 「とり・みきの吹替どうなってるの」ではなく「『とり・みきの吹替どうなってるの』ってどうなってるの」状態になっていましたが、これは僕の本業のスケジュールが激変したからで、ひとえに不徳の致すところです。申し訳ない。

さて、このコラムの前回と前々回では「アジア人俳優の吹替が不自然に聞こえるのはなぜなのか」という疑問をキーワードに語ってきました。一見ニッチでマニアックな問題に見えるかもしれませんが、実はこのテーマを考察していくと吹替の「演技」や「歴史」、そしてハード面の進化など色んなことを語れるのではないか、と思ったからです。

前々回「アジア人俳優の吹替って不自然に聞こえる?」では「リップシンクの違い」や「不気味の谷」問題など、主に視聴者が受け取る違和感について語っています。

前回「欧米人の吹替は実はアニメだった?」では声優側の演技について。キャラをわかりやすく立たせる工夫が必要だった初期の外画吹替と、いわゆる「新劇調」の吹替への応用は効果的な発明だったが、欧米人にはフィットしてもアジア人には合わなかったのではないか、という話をしています。

時間があれば前の2回を参照された上で今回の最終稿をお読みいただければ幸いです。今回は、声優さんや番組の話に比べ表に出ることが少ない録音機材などハード面のお話です。以前にも書きましたが、声優さんの演技は実はかなり録音技術の制約や束縛を受けてきたのです。

●生放送の時代

吹替の歴史にある程度詳しい方ならご存じの通り、黎明期のTV吹替は1本のマイクで、しかも生放送で行われていました。

本邦初の吹替番組は1955年10月にKRT(現TBS)が放送したマックス・フライシャーのアニメ『まんがスーパーマン』で、大平透さんが生放送で担当しました。実写の外画吹替第1号は同じKRTの子供向け西部劇『カウボーイ・Gメン』で翌56年4月から放送、滝口順平さんがやはり生で担当しました。これらはほぼ一人の演者が全てのセリフとナレーションを担当する、いってみれば昔の活動弁士的なスタイルでした。

少し遅れる形で日本テレビではアニメ『テレビ坊やの冒険』(千葉順二・他)、ドラマ『ロビンフッドの冒険』(リチャード・グリーンを外山高士)を画像と録音テープの同時送出という方法で放映します。

KRTも日テレもいずれも子供番組であり実験放送的な意味合いが強かったと思われますが、やがて大人向けのドラマを流すようになってもKRTはしばらく生放送が続きます。しかも狭いアナウンスブースで複数の声優が1本のマイクの前に入れ替わり立ち替わりしつつ声をアテるというかなりアクロバット的なものでした。マイクだけでなく原音を聴くためのレシーバーも二つくらいしかなく、本番ではこれを奪い合うようにしながら生の吹替放送が行われていました。

こうした状況では繊細な声の演技など望むべくもありません。とにかく「マイクに通る」声量で「画面の口パクに間に合う」ことが必須条件でした。実際出番の少ない時間帯にトイレ退出した女優さんが終盤に間に合わず、熊倉一雄さんがお姫様の声まで喋っちゃった、というコントのような逸話も残っています。(※1)

かたや日本テレビでは録音方式をとっていたのですが、録音といっても画面とは機械的にシンクロしていない6ミリのオープンリールテープに音だけ別に入れた物ですから、テープを物理的に切り貼りしたり、送出時に回転速度を微調整しながらなんとか画面に合わせていたといいます。これには番町スタジオの社主である安井治兵衛氏の創意工夫がありました。

余談ですが僕は中学時代放送部にいたので6ミリテープの切り貼り編集というのは実際にやったことがあります。慣れるとけっこう面白いのですが、事故も多い。当時の放送では30分番組で200箇所もハサミを入れたといいますから気が遠くなります。そこまでやっても、だんだんテープがずれて男女の声が入れ替わったり、それを回復するために早回しになったり、というようなことがあったようです。

実は技術的にはフィルムに光学録音で吹替のセリフを焼き付けることは可能でした。巷で公開されている映画では普通にその技術で音声が出ているのですから当たり前です。映画会社から買ったフィルムのデュープ(複写版)を起こしそれに録音すればいいのですが、これには手間も予算もかかり、そもそも映画会社はフィルムに手を付けることもコピーも一切禁じていたのでした。

●シネテープ録音の時代

56年にはスタンシル・ホフマン社の16ミリ磁気フィルム録音機が日本テレビ『ジャングル・ジム』(ジム役ジョニー・ワイズミュラーを田中明夫)で試験使用されます。その2年後にはソニーが同種の録音機「シネコーダー」を発売、これらの磁気録音機に使用する16ミリのシネテープはフィルムと同サイズでパーフォレーション(送り穴)もついていたので、吹替音源の画面へのシンクロ率は飛躍的に上がりました。さらにドイツ製のスタインベックでは同機種上でフィルムとシネテープ両方の操作が可能で編集作業も楽になりました。

60年代から70年代にかけての吹替の録音と編集にはこうした16ミリ磁気録音機が活用され、それは吹替の演技の質や精度も上げることになります。ただ、別の緊張感も生まれました。シンクロ率が上がったとはいえ、画像(フィルム)と音源(シネテープ)はまだ別送出です。シネテープ自体がかなり高価であったことに加え、放送事故に繋がりかねない物理的な切り貼り編集はとても出来ませんでした。

なのでCMとCMの間の1ロールは編集NG。声の出演者が全員集まっての一発同時録音でした。生放送ではどんな失敗があってもリテイクはありませんが録音は違います。誰かが途中でとちるとまたロールの頭まで戻って最初から録音し直すはめになります。新人がこれをやると大顰蹙(ひんしゅく)。加えて滝口順平さんなどはわざとリハにはないアドリブを入れ共演者を笑わせにかかったというエピソードもあります。

この緊張感は、ある意味芝居の真剣度や共演者の一体感を高めるのに一役かった……ということもいえなくはありません。でも演じるほうからしたら、やはりないに越したことはないプレッシャーだったでしょう。技術スタッフにしても、たった1本しかないコピー禁止のフィルムと吹替音声を録音するシネテープの両方の取り扱いに細心の注意を払わなければならなかったのは大変な気苦労だったと思います。(※2)

この時代は録音スタジオに写される原画画面もまだTVモニターではなく映写機による投影でした。これが80年代になるとTVのドラマも吹替の編集もビデオテープが主流の時代に移っていきます。

●MEとアフレコとアテレコ

さてここで、そもそもなぜ吹替版というのが可能なのか書いておく必要があるかもしれません。

簡単にいえば、それは音楽(Music)と効果音(Sound Effect=SE)、合わせてMEと呼ばれている音声と、セリフの音声が元々別になっているからです。MEは原音を使ってセリフだけ入れ替えればどの国の言葉であっても吹替版が出来上がるわけです。これはフィルムの時代から、デジタル5.1チャンネル化されているような現在の音源まで基本的には変わりません。

SEというと、70年代以降のビデオ撮りの日本のドラマを見ている感覚だと現場の音をそのまま映像に同録していると思いがちになりますが、映画の場合は、とくにハリウッド映画の場合は、かなりリアルな日常音でもほとんど後付けです(もちろん現場で録った音を素材として使う場合もあります)。なのでセリフの音声とは完全に分離できているというわけです。

面白いのは悲鳴などはセリフではなく効果音としてMEテープに入っていることも多いらしく、たまに吹替版で悲鳴だけ原音に切り替わることがあるのはそのためです。これは元の作品が既に俳優本人の声でなくて既存の「悲鳴」というSEを使っているからで、複数の映画で同じ悲鳴が使われていたりします。

元の映画の俳優のセリフはスタジオ撮影の場合はほぼ同録ですが、機材(たとえば送風機やカメラ自体の回転音)のノイズが大きかったり、また以前はロケのシーンはほとんどアフレコでした。俳優は自分の演技に後からセリフを録音していたのです。これは映画だけでなく、日本のTVドラマでもフィルム撮影の作品ではごくごく通常のポストプロダクション作業でした。

つまり「画面上の演技者のセリフをあとからスタジオで録音すること」自体は、フィルム作品に出演している俳優であれば誰しも経験していることであったわけです。この演技者が自分ではなくて他人になるとアフレコではなくて「アテレコ」になる、と考えるとわかりやすいでしょう。昔のフィルム撮りのドラマ、たとえば『ウルトラQ』などを見返すと子役の声は本人でなく声優の小宮山清さんがアテていたりします。

現在ではビデオ作品の場合は現場音もセリフもほぼ同録ですし、録音機材の進歩によりフィルム調(実際にはフィルムでなくてもはやデジタルのことが多いのでこう書いています)のロケ作品でも演技のリアリティの担保という観点からセリフは同録が多くなっているようです。

もっとも初期の外画ではMEテープが送られてこないケースもままありました。そういう場合はまず元の映画からセリフのない部分だけ音を録音し、セリフが重なっている部分は日本側で効果音や音楽を足していました。古い吹替のクレジットに「選曲・効果」という役割があったのをご覧になった方も多いでしょう。音楽はサントラ盤がある場合はまだいいのですが、しばしば別の映画の曲やクラシックが使われることもありました(MEテープがある場合でもCM前にシーンを盛り上げる曲をつけたり、夜の屋外シーンで虫の音を足したりすることもありました)。

●ビデオドラマの吹替

70年代には通常のTVドラマもビデオ制作のものが増えていきます。過渡期にはスタジオ部分はVTR、しかしビデオカメラ機材がまだ軽量化できていなかったのでロケ部分はフィルム撮り、という作品が幾つかありました。

外画でもこの方式で制作されたドラマが流れます。74年から75年にかけて日本テレビで放送されたBBCとユニバーサルTV制作の『コルディッツ大脱走』は、僕的には(シットコムや音楽番組ではない)ビデオ撮りの海外ドラマを見た最初の作品でした。捕虜の英空軍中尉をロバート・ワグナーとデヴィッド・マッカラムが演じていました。

このドラマ視聴時に僕は奇妙な違和感を覚えました。フィルムのロケシーンでは感じないのですがVTRのシーンだけ吹替がどうもしっくり届いてこないのです。なにか不自然な気がするのです。しかし演じているのはワグナーが城達也さん、マッカラムが野沢那智さんというそれぞれのフィックス、定番中の定番であるお二人です。

この違和感の正体は当時はよくわかりませんでした。

技術の進化史はいま70年代半ばまで来たところですが、ここでちょっと時間を先に進めて今世紀の初めあたりまで飛びます。

2003年にBS2、翌年にはNHK総合でも放送された韓国制作のドラマ『冬のソナタ』(ペ・ヨンジュンを萩原聖人、チェ・ジウを田中美里)は社会現象といえるほどのヒットとなり、これを皮切りにラブコメから歴史大河ドラマまで多くの韓流ドラマが放送、一大ブームを引き起こしました。さすがに当時より数は減りましたが、いまでもBS・CS放送では毎日のように韓流ドラマが流れています。

そのほとんどはビデオ撮りのドラマです。ブームになったくらいですから、もしかしたらほとんどの視聴者は気にならなかったのかもしれませんが、僕はこの時期久々に大量のビデオドラマの吹替を見て、またまた「しっくりこない感」を抱え込んでいました(欧米の吹替ドラマは一部のシットコムを除きフィルム撮り、もしくはフィルム調の画質に寄せて映画の方法で撮られた作品がその後も主流だったからです)。

これには前回・前々回で述べた理由も起因していたかもしれません。またビデオの画質はクリアですからより口の動きがはっきりとわかり、リップシンクのずれがフィルムより目立つ、ということもあったでしょう。

そういうふうに最初はセリフばかり気にしていたのですが、やがてこの違和感は「セリフ以外の音」にあることがわかってきました。いや、もう少し正確にいうなら「セリフ以外の音がない・少ない」ことによる不自然さだったのです。

先述したように映画やフィルム撮りのドラマでは原画と同じMEテープの上に日本語のセリフが乗っています。そのミックス加減は録音と同じくらい重要で「調整」と呼ばれるスタッフの腕の見せ所になっています。セリフが聞こえなくても浮きすぎてもダメで、スタジオ録りの日本語のセリフがまるで撮影現場で自然に発せられてるように、しかし聴き取りやすいようにミックスするわけです。

ところがビデオ撮りの作品では現場音もセリフも一緒にして録音し、MEテープが独立してないことが多い。セリフを吹き替えるにはそのシーンのセリフ以外の音も消さないといけません。消した効果音(SE)はあらためて日本側で既存の物や作った音をつけ直しているのですが、これはないと不自然な必要不可欠なものにしぼられてしまいます。もとの現場音の情報量にはどうしても届きません。

つけたSE自体が元の音とは違うということもありますが、そもそもビデオ撮りのドラマでは一見セリフ以外は無音に聞こえるようなシーンでも実は微妙な音をたくさん拾っています。細かな息づかい、きぬずれ、壁や配置された大道具による残響、なにかの機械音、意図せぬノイズ……そういう空間音に満ちたビデオ撮りのドラマを我々は普段日本の番組で見て慣れていますから、ビデオ画像なのに無音の中に限られたSEとセリフだけが聞こえてくると不自然で浮いた感じになってしまうのだと思います。

音声制作スタッフの方達もプロですから、おそらくビデオ作品の場合はこうしたことを考慮してあれこれ工夫はしているはずですが、それでもやはり限界はありそうです。以前、伊達康将氏(『冬のソナタ』『オクニョ 運命の女』の音響監督であり、フィルムとビデオが混在した『空飛ぶモンティ・パイソン』の音響監督でもあります)にお話をうかがったときも「うーん、違和感があるならそれはひとつは空間音のあるなしかなあ……」と、「そんなこと訊いてきたのはあんただけだ」というようなお顔でおっしゃってました。気にしすぎで申し訳ありません。でも結局「冬ソナ」は大ヒットしたわけですから。

というわけで違和感の正体の仮説の3回目は(TV作品限定ではありますが)「それはビデオ撮りのドラマだったから」というものでした。実際にはこの3回で語ったような要素がミックスして独特の違和感が発生しているのだと思います。

●テープロックシステムの時代

さて、話を70年代の終わり頃に戻します。このころは吹替の音声制作においてもVTRの時代が到来していました。原版マスターもフィルムからビデオで届くようになり編集も幾分容易になっていましたが、吹替音声との同期にはまだ手こずっていました。

70年代にはMAVTR(マルチ・オーディオ・ビデオテープレコーダー)という2インチのオーディオテープにビデオ映像と音声4~8トラックの両方を収録出来る録画&録音機が開発されましたが、これは高価すぎてあまり普及しませんでした。

代わりに普及が進んでいた通常の音声用のMTR(マルチ・トラック・レコーダー 16~24トラック)とVTRをシンクロさせる「テープロックシステム」が開発され、80年代初頭に実用化されます。ビデオテープに記録されたタイムコードをMTRにも記録しシンクロナイザーを使って二つの機械を同期させるもので、これによって録音時間も最終的なダビングの時間も短くなりました。

MTRの活用で複数の人数のセリフやME、追加のSEなどをそれぞれ別のトラックに録音、ミックスすることが可能になったのです。ミスの修整も容易になり、声優個別の「抜き録り」も出来るようになりました。

タイムコードの表示は収録現場でも大きな変革でした、これまで勘に頼っていた喋り出しのタイミングがナンバー表示でわかるのです。しかも放送用に編集の済んだタイムコード入りの映像は家庭用のビデオテープにダビングされ、翻訳台本とともにあらかじめ声優の元に届くようになりました。以前は収録前日にスタジオに来て初めて見ていた映像が、数日前から自宅で何度も見られるのです。タイミングだけでなく担当俳優の演技を研究し自主リハを行う時間が生まれました。(※3)

声の演技にとってはまちがいなくよい技術革新であったのと同時に、マルチトラックは吹替現場に慣れていない人材を声優さんとは別個に収録する場合にも役立ちました。うまくいったケース、そうでないケースは個々あると思いますが……。

●デジタル化の時代

80年代は音楽業界においても映画や吹替の音声制作においてもデジタル化が進んだ時代でした。デジタルデータを記録するメディアは最初はテープだったり、またデジタルMTRを使っていてもコンソール(制御卓)はまだアナログ仕様だったり、とまさに過渡期。色んな試行錯誤を経て90年代前半には放送機材はほぼデジタル化。もちろんアナログの音や操作感に愛着を持つ人はいたにせよ、画質と音質はこれまでになく向上しました。

前々回で述べたようなTV黎明期の走査線の少ない――極端にいえば外国俳優の区別すらつきにくいモノクロ画像につける演技と、毛穴まで映し出すハイビジョン映像につける演技とでは、当然その質は変わってきます。レコ-ダーとともにマイクロフォンの性能の向上もあり、舞台的な発声ではない繊細で自然な声の演技が可能となりました。

デジタル録音は、初期はデジタルMTRとデジタルコンソールの組み合わせだったものが、90年代の間にパソコンツールを使ってのハードディスクへの録音・編集=DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)へと移行していきます。

現在、多くのスタジオで使われているDAW用のツールはPRO TOOLSで、これは音楽業界も同じですね。音質を損なうことなくたくさんのトラックに録音でき、その音声データを波形として表示するので、画面上でタイミングの調整や移動、さらには音程を変えずに時間を伸縮することも、その逆も、ノイズ消去も、ありとあらゆる編集と加工が短時間で可能です。部分的にエフェクトをかけることもミスの差し替えも何テイクか録って部分的に最良のバージョンを選択するのも容易になりました。さらには素材音源や完成データはネット経由でやりとりすることもできます。

声の演技はかつてのスタジオでの一堂会しての集団芝居から、各人の声をセンテンス単位で録音し、最終的にパソコン上で編集するためのデータ素材化しつつある、といっていいでしょう。とくに元の映画会社のチェックが厳しいオフィシャル版では、発語の強弱も含め原典の他言語による再現・トレースという側面が重視されますから、そういう意味での吹替の演技の質や精度は確実に上がっているといえます。

とはいえ、スタジオ現場での共演相手との絡み合いによって生じる芝居のグルーヴや熱量を大事にしたいと考える声優さんは依然として多いのも事実です。慣れている声優さん同士であれば一堂会しての録音のほうが時間、ひいては経済効率的にもよく、このやり方はまだしばらくは続くでしょう。個人的には吹替には原版のトレースではない声優さん独自の表現の面白さもあると思うので、そういった面もなくなってほしくありません。

MTR導入時のときもそうでしたが、後からいくらでも訂正・加工・編集が可能なツールの登場によって、吹替に不慣れな演者の起用はますます容易になりました。話題作りや宣伝優先の、結果的に作品を貶めるような起用は願い下げですが、プロパーの声優ではない才能を使いやすくなったことも事実です。第一線の声優さんには釈迦に説法というか、もとより自明で実践されていることですが、表面的な口パク合わせのスキルやテクニックを超えた奥深いところでの表現力で勝負する時代になったのだと思います。

以上でこのコラムは終了です。掲載の場所をいただいた20世紀フォックス ホーム エンターテイメントと編集協力のフィールドワークスに、そしてなによりも読んでいただいた方々に感謝致します。

よい吹替映画が今後もたくさん作られますように。

※参考文献: 『辛苦労日記』安井治兵衛(63年・暁出版) 『吹き替え文化の明日に向かって~音声連30年の記録~』(2008年・日本音声製作者連盟)

※1)生放送の際、6ミリテープ同時録音して地方局へフィルムと一緒に搬入していました。後日、6ミリテープから16ミリネテープへコピーし「音合わせ作業」でシンクロをチェックして、生放送作品もリピート対応しています。

※2)当時の録音スタジオ作業は、ミキサー、レコーダー、プロジェクターの最小3名のスタッフ構成で対応し、フィルムに「傷を付けないため」の細心の注意が払われていました。作業中はセリフや音楽などが入る目印を「デルマー」と呼ばれる色鉛筆でフィルムに直接書き、作業が終わるとそれらを消して放送局への納品となります。しかし納品時にデルマーの拭き落とし忘れなどがあると、局に出入り禁止となるほど厳しい措置が取られました。

※3)声優への家庭用のビデオテープの貸し出しは、配給元・放送局の許可を得たうえで行われていました。収録後のビデオテープの回収、そしてアフレコ台本のナンバーリングは徹底されていました。
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2018.9.7「ポセイドン・アドベンチャー」羽佐間道夫インタビューを追加しました。

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2017.11.22「L.A.コンフィデンシャル」江原正士&伊達康将インタビューを追加しました。

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2017.09.01「エイリアン2」鈴木弘子インタビューを追加しました。

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2017.04.28『ヒート 製作20周年記念版<2枚組>』菅生隆之【後編】インタビューを追加しました。

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2017.01.27『サンズ・オブ・アナーキー』森川智之&五十嵐麗インタビュー【後編】を追加しました。

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2015.11.12傑作吹替視聴室Vol.15:吹替の名盤特集第1弾を追加しました。

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