
法廷ドラマを得意とする名プロデューサー、デイビッド・E・ケリーが2004年に送り出してきた『ボストン・リーガル』は、これまでの重い、難しいといった法廷ドラマのイメージを一新するようなパワーと個性を持ち合わせた1作だ。1997年、ケリーは『アリー myLove』と『ザ・プラクティス』という2本のエポックメイキングな法廷ドラマを世に送り出した。『アリー』ではコメディを、『ザ・プラクティス』では社会派ドラマをというように、法廷をめぐるドラマの両極端を描き、1999年のエミー賞ではドラマ部門、コメディ部門の作品賞W受賞という快挙を成し遂げたが、『ボストン・リーガル』は、まさにこの2作品の面白さを融合したハイブリットな作品なのだ。
『ザ・プラクティス』の最終シーズン。降板したディラン・マクダーモットに代わり、番組の顔として登場したのがジェームズ・スペイダー扮する弁護士アラン・ショアだった。有能な弁護士でありながら、行く先々でトラブルを巻き起こすお騒がせ弁護士であるアランと彼を巡る人間ドラマには、これまでの『ザ・プラクティス』にはなかったコミカルなトーンが生まれ、それをより一層磨き上げるため、『ボストン・リーガル』として新たに生まれ変わった。舞台は富裕層が顧客の大手弁護士事務所、クレイン・プール・シュミットに移り、アランが関わる案件も製薬会社や保険会社、自動車メーカーなど巨大産業相手の訴訟から、強盗やレイプ、殺人事件などの刑事訴訟、半ば言いがかりに等しいような荒唐無稽な民事訴訟まで幅広いものとなっていく。バラエティ豊かな案件と、個性豊かな弁護士たちの人間ドラマをブラック・ユーモアたっぷりに描きながら、同時にアメリカの抱える問題を浮き彫りにする社会派ドラマとしての側面もきっちりと描き出すことに成功している。
この遊び心と社会性との両立に大きく貢献しているのが2人の主演俳優、ジェームズ・スペイダーとウィリアム・シャトナーだ。2人が演じるアランとデニーは、常識的にはあり得ない! と思うほど、問題行動続出の困った弁護士。アランは違法スレスレの手段も厭わず、トリッキーな手法で相手側を打ち負かすこともしばしば。法廷では不利な裁判でも陪審員を納得させる説得力を持つほど雄弁さが武器となっている。一方のデニーはボストン法曹界では伝説的な人物ながら、今は事務所の頭痛の種というトラブル・メイカー。今も弁護能力は衰えていないが、非常識な行動が多すぎる上、決めセリフは「デニー・クレイン」という超変わり者だ。この可笑しな大親友コンビが織り成す騒動の数々はドラマの牽引力となり、硬いイメージの法廷ドラマにバディものとしての軽快さを生み出している。このようなとことん漫画的なキャラクターを見事にリアルな人物像へと昇華していくスペイダーとシャトナーの演技力は高く評価され、エミー賞を筆頭に各TV賞の常連に。2人が毎エピソード、酒を飲みながら語らい合うシーンは、アランの超絶長セリフの最終弁論とともに、番組の名物となっている。
ドラマのもうひとつの見どころが、主演2人に負けずとも劣らない超個性的なキャラクターと、豪華なゲスト俳優たちだ。シーズン1、2では海外ドラマファンにはお馴染みのヘザー・ロックリアやエリザベス・ミッチェル、ダナ・デラニーを始め、マイケル・J・フォックス、トム・セレック、ルパート・エベレットなど、映画界で活躍中の面々が続々と登場し、ドラマを大いに盛り上げる。特に病気で第一線からは離れているマイケルの出演は、ファンにとっては感涙ものだ。一方ドラマを彩るキャラクターたちにも要注目。同僚弁護士たちはもちろん、一見常識的に見える判事や検事にも、インパクト大の強烈キャラが続出する本作は、シーズンを重ねるごとにそのインパクトが弱まるどころか、勢いを増していくから目が離せない。このキャラクター・ドラマとしての濃密さと、社会派ドラマとしてのシリアスさ、そしてバディものとしての軽快さの絶妙なバランスが、『ボストン・リーガル』の大いなる魅力となっているのだ。


