LOGAN

映像評論家 麻倉怜士氏による推薦コメント

「これは単なるモノクロではない。」

モノクロはカラーから色を抜いた映像?---とんでもない。『ローガン』のモノクロ版を見ると、そんな浅薄な批評がまったく的外れであり、むしろ監督が憧れる埃っぽい「フィルムノワール」の世界観は本モノクロ版にて極まると断言できよう。もともとカラー版でも、影の世界の多さは明らかにノワール指向であったが、モノクロ版はさらに暗黒系へ傾斜する。その制作過程では、監督の意図を的確に反映させる形で、ショット単位で調整し直したという。
色の情報性が排除され、リアリティを涵養する手掛かりが限定される白黒世界では逆に想像力がより深く刺激され、より深く映像の持つ意味を考えさせられ、その結果として、より深く映画の世界へ没入させられる。本来は明朗に映像を彩る青空や陽光が色を失われると暴力をライトアップする照明となる。黒のリムジン・クライスラーの汚れと傷が増えれば増えるほど、ウルヴァリンの苦悩はより深くなる。ノワール的な虚無感、暗黒性の究極がモノク版には、ある。黒と白の間の階調をより緻密に再現するHDRだからこそ、よりノワール性が濃密なのだ。
映像評論家 麻倉怜士