キミは日本語吹替の魅力を知っているか?実力派声優が魅せる【吹替】の真実を堪能せよ!

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PICK UP #26 『猿の惑星:聖戦記』公開に合わせ、オリジナル版『猿の惑星』を振り返る!吹替史上に刻まれる、吹替版ゆえの思わぬ“事件”とは!?

地球がなぜ“猿の惑星”となったのかを描くプリクエル(前日譚)であるリブート版『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011年)が、第2作『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014年)を経て、2017年10月13日公開の最終章『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』でついに完結を迎える。監督は『猿の惑星:新世紀』に続いてマット・リーヴス。『猿の惑星:聖戦記』ではアンディ・サーキスが演じるエイプ(類人猿)のリーダーであるシーザーと、エイプと対立する人類軍の大佐(ウディ・ハレルソン)が、それぞれの種の未来を懸けた壮絶なドラマを繰り広げる。

リブート版三部作のベースとなった“SF映画の金字塔”『猿の惑星』

猿の惑星
 全米では、『猿の惑星:聖戦記』は当然のようにランキング初登場No.1、累計興収1億4470万ドルを超える大ヒットを記録。批評家からも絶賛の評価が寄せられたが、この根強い人気も、1968年の記念すべき第1作『猿の惑星』の存在があってのことといえる。同作は、同じ1968年製作の『2001年宇宙の旅』と並び、“SF映画の歴史を変えた1本”と称される記念碑的な作品。「人類が猿に支配される」という斬新なストーリーに人間社会への痛烈な風刺も込めたピエール・ブールのSF小説を、『パットン大戦車軍団』『パピヨン』でも知られる職人監督、フランクリン・J・シャフナーが演出した。本作は大ヒットを記録し、当時経営難に陥っていた20世紀フォックス社を救った一本でもある。

 『猿の惑星』といえば、衝撃的な結末が有名すぎるほど有名だが、実は原作にこのオチは無い。しかし、このオチにはもう一つの重要な意味がある。登場する猿たちは最初から英語を喋るため、観客は映画ならではのご都合主義かと考えるのだが、これが壮大な伏線であることが最後に理解できる。逆にいえば、猿が英語を喋る不自然さを解消するために、ひねりだされたオチと見ることもできそうだ。このような丁寧な作劇、あまりにもリアルな猿の特殊メイク、そして予想外の衝撃的な結末により、『猿の惑星』は“SF映画の金字塔”としての地位を確立したのである。

『猿の惑星』全3バージョンの日本語吹替版は、3種3様に楽しめる

 さて、『猿の惑星:聖戦記』に合わせ、第1作『猿の惑星』を吹替版で振り返ろう!というのが、今回のコラムの主旨である。だが吹替版に話を進めると……吹替史上に残る“事件”を避けては通れない。詳しくは後ほど述べるとして、まずは「吹替の帝王シリーズ」第6弾として2014年に発売された「猿の惑星<日本語吹替完全版>コレクターズ・ブルーレイBOX」に収録されている、3バージョンの吹替版の聴きどころを振り返ってみよう。

<TBS版>

猿の惑星 TBS「月曜ロードショー」版吹替台本(縮刷)
 1973年12月24日、TBS「月曜ロードショー」で2時間半の拡大枠で放送されたのがこのバージョン。当時子供だった自分もこの放送を観たが、同番組の解説者・荻昌弘が、放送中に特殊メイクを実際に施され、最後に猿マスクのまま解説を締めくくったことが、おぼろげながら記憶に残っている。

 主演のチャールトン・ヘストンの声を担当したのは、同俳優のフィックス声優・納谷悟朗。今でこそ、同じ俳優でも演じるキャラクターによっては、別の声優が演じるケースが増えているが、当時は、「この俳優にはこの声」という専属担当制(フィックス)が実施されていた。また、局によっては独自にフィックス声優を決める場合もあり、必ずしもある俳優の声がいつも同じ声優ということでもなかった。ところがそういった時代でも、納谷は『猿の惑星』の全て吹替のバージョンでヘストンの声を担当している。局をまたいで、またソフト版でも「ヘストンの声なら納谷悟朗」という強いイメージができあがっていたことが分かる。納谷の声と演技は、それほどヘストンにシンクロしていたのである。

 ヘストン演じるテイラー大佐と行動を共にするチンパンジーのコーネリアス(ロディ・マクドウォール)とジーラ博士(キム・ハンター)をそれぞれ担当したのは、山田康雄と中村メイ子。中村は歌手・タレント活動で人気を集めたが、天才子役としてデビューし、海外テレビドラマ「わんぱくフリッパー」の吹替版でレギュラーを務めたこともある。アテレコ経験者として、いわゆる“タレントの吹替キャスティング”とは一線を画す演技を披露している。ザイアス博士(モーリス・エヴァンス)役には、アルフレッド・ヒッチコックのフィックスでもあった大御所、熊倉一雄がキャスティングされ、いつものコミカルな雰囲気は封印して厳格なキャラを演じている。

 「猿の惑星<日本語吹替完全版>コレクターズ・ブルーレイBOX」にはTBS版の台本が付属しているので、お持ちの方は実際に読んでいただきたいのだが、翻訳された台詞回しは少し固めの印象を受け、字面だけで読むと会話としては不自然に思える箇所もある。しかし実力のある声優たちの演技によって、耳で聞くと違和感のない台詞になっていることに驚かされる。まさに声の「巧みの技」である。緩急自在の山田の演技や、議長(ジェームズ・ホイットモア)役の久米明の、いかにも議事進行を面倒くさがっている雰囲気の喋りなど、意外なことに全体としては、3つのバージョンで最も軽妙で、深刻すぎない仕上がりになっている。猿が自分たちのことを「おいら」、テイラーら人類のことを「おまえ」と言うのも、どこかのどかな印象作りに役立っている。

<フジテレビ版>

猿の惑星 フジテレビ「ゴールデン洋画劇場」版吹替台本(縮刷)
 次に制作された1975年のフジテレビ「ゴールデン洋画劇場」版では、コーネリアス役をジェームズ・キャグニー、ジェリー・ルイスのフィックス声優として知られる近石真介が担当。ジーラ博士役は、女優で歌手の楠トシエが務めた。近石は、TVアニメ「サザエさん」のマスオさん役も長らく務めて、のほほんとした良い人という声の印象が強いが、本作ではコミカルさは抑えられ、主人公テイラーに完全に気を許してはいないという、どこか厭世的でかつ、大人としての行動を取るキャラクターになっている。

 大塚周夫が担当したザイアス博士も、熊倉が演じたバージョンとは一転した重い演技。議長役を務めたのは久松保夫は、黒澤明の『虎の尾を踏む男達』の梶原の使者役で新鮮な演技を披露し、大人気テレビドラマ『日真名氏飛び出す」で人気を博したベテラン俳優。吹替えではバート・ランカスターや、海外ドラマ『スタートレック/宇宙大作戦』のミスター・スポックの声などを担当しており、本作では出番は少ないながら重厚な演技で場面をさらう。このバージョンは、大木民夫、富山敬、木村幌、田中信夫なども出演しており、脇役にいたるまでバラエティに富んだ声がそろっていて、耳でも楽しめる。
 

<ソフト版>

 3つ目のバージョンは、1982年の「二ヵ国版LD」の発売時に制作された「ソフト版」。フジテレビ版で、ジーラ博士の甥であるルシアスを担当した富山敬が、コーネリアス役に昇格(?)。フェイ・ダナウェイのフィックス声優の平井道子がジーラを担当した(平井はシリーズ第2作『続・猿の惑星』と第3作『新・猿の惑星』のテレビ版でもジーラ役の声を務めている)。ザイアス博士は、TBS版と同じ熊倉一雄が演じた。

 このバージョンで注目すべきは、飯嶋永昭による翻訳である。他バージョンでは、猿たちは自分たちを「おいらたち」「我々」呼んでいるが、ここでは「人類」ならぬ「猿類(えんるい)」と呼ばせている。原語では単なる「死人に口なし」的な台詞を、「唯一のよきヒトとは、死人のことだ」と敢えて格言めいた翻訳にしているのだ。一方で、野外の檻に監禁されるテイラーを見に来たザイアスが、調査の許可を求めるコーネリアスに「古代の遺物を掘る一方で、己の名声を埋めるようなミスを犯すなよ」とシャレのきいた忠告をするが、この台詞は3バージョンで唯一原語に忠実に翻訳している。意訳すべきは意訳、原語の良いところは生かしてそのまま翻訳する。この辺りの絶妙なさじ加減をぜひ味わっていただきたい。
 

【ネタバレ注意!】衝撃のラストをさらに衝撃的にする、吹替え史上に残る“事件”とは

※以下は完全ネタバレなので、『猿の惑星』をまだ観たことのない方はお読みにならないことをお勧めします。
 では、いよいよ序盤で述べた「吹替史上に残る“事件”」について解説しよう。以下は、「猿に支配された惑星と思っていた場所が、実は未来の地球だった」というラストでの各バージョンそれぞれでの台詞だが──

─TBS版
「お前たちが滅ぼしたんだな! 畜生!猿共め! こん畜生! 猿なんかみんな地獄に落ちてしまえ!!」

─フジテレビ版
「あぁ……何てことをしたんだ! 畜生ッー! 人間なんかみんな地獄に落ちてしまえ!」

─ソフト版
「なんて奴らだ! こんなにしちまって! バカめ、猿に笑われるはずだよこれじゃぁ」

 そう──TBS版だけ、「猿が人類から地球を奪った」ことになっているのだ。映画本来のオチは、猿が人類を滅ぼしたわけではなく、人類が愚かな行ないによって自滅したということを示唆しているのだが、TBS版はなぜこうなってしまったのか……。一般的に、当時のテレビ放送の吹替版は、視聴者にいかに内容を分かりやすく伝えるかに気を配って制作されていた。そこに、TBS版の意訳の理由があったのではないかと推察される。つまり「あまりにも斬新なSF設定のため、お茶の間の視聴者がすんなりと理解できないのではないか?」という、放送局側の配慮が働いたのではないだろうか。猿が支配する惑星が実は未来の地球だったというのは、それほどまでに当時としてはトリッキーだったのだろう。
ちなみに「ソフト版」の台詞は文字にするとちょっと可笑しいが、本編を実際に観ると、真に迫る納谷の演技によって悲壮感と絶望に満ちた名台詞となっている。

 『猿の惑星』のケースはテレビ放送の吹替版の世界でも珍しいものといえるが、複数の吹替版を聴き比べることで、同様の思わぬ“事件”に出会うこともありうる。いろいろな作品の複数バージョンの吹替版から、自分だけの“事件”を発見してみてはいかがだろうか。

(Text by 浦木 巧)

 
史上最強の猿の惑星

Siringo【プロフィール】

幼少期よりTVで多くの洋画を鑑賞し吹替の魅力にとりつかれる。'02年より株式会社フィールドワークスでソフト制作業務を担当。独自の吹替探索ルートと一般の方から吹替音源の協力を得る方法により、失われた吹替版を多数復刻。『吹替の帝王』シリーズにも協力。現在までに関わった吹替収録ソフトは100作品を超える。

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2017.10.06「エイリアン2」田中秀幸インタビューを追加しました。

2017.09.22傑作吹替視聴室Vol.26:『猿の惑星』を追加しました。

2017.09.01「エイリアン2」鈴木弘子インタビューを追加しました。

2017.08.25傑作吹替視聴室Vol.25:『エイリアン』を追加しました。

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2017.07.28傑作吹替視聴室Vol.24:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を追加しました。

2017.07.03『インデペンデンス・デイ』山寺宏一インタビューを追加しました。

2017.06.23傑作吹替視聴室Vol.23:『シザーハンズ』を追加しました。

2017.05.26傑作吹替視聴室Vol.22:『LOGAN/ローガン』公開記念!を追加しました。

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2017.02.24『ダイ・ハード/ラスト・デイ』樋浦勉インタビューを追加しました。

2017.01.27『サンズ・オブ・アナーキー』森川智之&五十嵐麗インタビュー【後編】を追加しました。

2017.01.06『サンズ・オブ・アナーキー』森川智之&五十嵐麗インタビュー【前編】を追加しました。

2016.12.22『ホーム・アローン』矢島晶子インタビューを追加しました。

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2016.10.21『王様と私』壌晴彦インタビュー【後編】を追加しました。

2016.10.07『王様と私』壌晴彦インタビュー【前編】を追加しました。

2016.09.09『X-ファイル』戸田恵子インタビューを追加しました。

2016.08.19『ターミネーター』小山力也インタビューを追加しました。

2016.08.12『ターミネーター』大友龍三郎インタビューを追加しました。

2016.07.22『マイノリティ・リポート』佐藤拓也【後編】インタビューを追加しました。

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2016.06.24『コマンドー』若本規夫インタビューを追加しました。

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2016.05.27『X-ファイル コレクターズブルーレイBOX』小杉十郎太&相沢恵子&春日一伸インタビューを追加しました。

2016.05.13『X-ファイル コレクターズブルーレイBOX』福永莞爾&平田勝茂インタビューを追加しました。

2016.04.15傑作吹替視聴室Vol.20:『X-ファイル コレクターズブルーレイBOX』特集第3弾を追加しました。

2016.04.01傑作吹替視聴室Vol.19:吹替の名盤特集第三弾を追加しました。

2016.03.18傑作吹替視聴室Vol.18:吹替の名盤特集第二弾を追加しました。

2016.02.29傑作吹替視聴室Vol.17:『X-ファイル コレクターズブルーレイBOX』特集第2弾を追加しました。

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