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納谷悟朗インタビュー

『ルパン三世』の銭形警部、『宇宙戦艦ヤマト』の沖田艦長といえば、誰もがその声を思い出す納谷悟朗。洋画のアテレコでは、この『夕陽のガンマン』ほか、マカロニウエスタンに次々と出演したリー・ヴァン・クリーフはもちろん、名優チャールトン・ヘストンのフィックス声優としても名を馳せた。吹替黎明期よりいまなお現役として活躍し続ける大御所のひとりに、『夕陽のガンマン』、そして吹替への想いについて聞いた。

リー・ヴァン・クリーフはすごい役者

─今回、『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』と、約40年も前の作品になりますが、やはり“リー・ヴァン・クリーフといえば納谷悟朗”ということで、納谷さんにお願いすることとなりました。テレビ放送の際に吹替をされているのですが、当時の吹替は非常に出来が良くて、ファンの方は何度も楽しまれているんですね。ところが、カットのために『夕陽~』は40分、『続~』になると1時間も日本語音声が不足している…そこで今回は“日本語吹替完声版”として、すべての吹替を追加しよう! やりましょう! ということで商品が企画された次第なんです。

 でもね、その頃とは、声もすっかり変わってしまいましたよ。

─7年前に発売された『西部悪人伝』(スティングレイより発売。現在廃盤)の際も、追加録音がされましたが、ユーザーからは反響が大きく、「リー・ヴァン・クリーフはやっぱり納谷悟朗じゃないと!」と評判でした。

 なるほど、そうなんですね。

─リー・ヴァン・クリーフという俳優の印象について教えていただけますか?

 変な俳優ですよね。二枚目じゃないし、特に強くもない。なんて言うか、とにかく存在感があるという印象はありましたが。なぜ僕が声を? って、(声をアテる側としては)起用された理由がよく分からないんですけどね。

─彼の元の声がガラガラなので、その辺りも理由のひとつなんじゃないでしょうか。

 彼の声は、相当前からやっていたと思いますが、いわゆる“大スター”じゃないんで、一般的にはなじみが薄いと思います。でも、一度観ればすぐに(クリーフだと)分かるような存在感を持っている。「すげえ役者」ってことでしょうね。いい役者ですよ。

─元々アメリカの俳優だったんですが芽が出なくて、セルジオ・レオーネ監督に「イタリア映画(『夕陽のガンマン』)に出てみないか」と誘われたそうです。そしてイタリアに渡ったら一気に有名になって、約10年間の間に、何十本というマカロニウエスタンに出演しました。そのほとんどの吹替を納谷さんがやられています(笑)。

 そうなんだ。そこまでは覚えてないなあ(苦笑)。

─もちろんリー・ヴァン・クリーフ以外の持ち役、チャールトン・ヘストン、小林昭二さんと分け合う形ですがジョン・ウェインですとか、クラーク・ゲーブルなどがいらっしゃいますが、声をやって良かったという印象の俳優はいらっしゃいますか?

 良かった印象…それぞれの声を演じたことで、ちゃんとお金になった点でしょうか(笑)。それは冗談として、皆さん素晴らしい役者ですよ。ですが、“こういう役だから、こう演じる”というのはなかったですね。僕はやれと言われたからやるだけであって、その演技が良かったか悪かったかは、後の問題なんです。演じているときは一生懸命やって、その評価はお客様がしてくれることであって、「良い悪い」はありませんでしたね。好き嫌いもなかった。(どの役者も)みんな好きですよ、仕事となれば。(名の通っている)ゲーブルやヘストンをやったから、作品がちゃんと残っているぶん、印象は強いですけれど。

─ 一番長くやられたのは、ヘストンでしょうか?

 ヘストンは主演作が多くて、役者としても息が長かったので、そうかもしれないですね。

─『ボウリング・フォー・コロンバイン』(マイケル・ムーア監督のアメリカの銃社会を描くドキュメンタリー。当時の全米ライフル協会・会長としてチャールトン・ヘストンが出演)でも少しだけヘストンが出演しているんですが、テレビ東京の放送用吹替では、ちゃんと納谷さんが演じられています。ちょっとしかない出演シーンでも、担当の声優さんがきちんと起用されているのは、ファン的にはとても嬉しいことです。

 はいはい(笑)。ですが、それが正しい姿勢だと思います。わずかしかないシーンで、(フィックス声優を)使うのは無駄だ、という意見もあるかもしれないですが……。

イーストウッドを演じたのは本人もびっくり!

─今回は、クリーフをたっぷり吹替えていただけました。

 (元が)自分がやった作品ですから、追加部分も、ちゃんと自分がやるべきでしょうからね。

─山田康雄さん、小林清志さん、大塚周夫さん、そして納谷さんと、キャスティングが絶妙ですよね。オリジナルの音声よりも、吹替版の方が断然おもしろいと評価されているわけですから、DVDをご覧になる皆さんにはきっと喜んでいただけると思います。

 そうだね、日本語版の方がおもしろいよね。

─皆さんは『ルパン三世』でも声の出演をされていて、ルパン、次元、五右衞門、銭形警部…それぞれが憎めないあのキャラクター設定に『夕陽のガンマン』も似ているんですよね。私は『ルパン三世』に夢中になっていた世代なんですが、そうした思い入れも相まってより魅力的に感じます。ファンの想いも同じだと思いますよ。

 確かに、キャスティングを変えないでくれたのは(演じる側としても)ありがたかったね。

─6、7年前に、追加で見つかった合計17分くらいのシーンを足したバージョンのDVDが発売になっているんですが、イタリア語の吹替音源しかなかったために、やはりイーストウッドほか主要キャストを連れてきて、英語音声の追加録音を行っています。

 なるほど、「こんなシーンがあったんだ」と思ったけど、そういう場面が追加されていたんですね。

─お酒を兵士に渡して聞くところが、その際に新たに足されているところです。劇場公開時にもなかったシーンです。ちなみに『夕陽~』『続~』の前に『荒野の用心棒』という作品があるんですが、イーストウッドの声を納谷さんがやってるんです。

 ああ! そうだそうだ! 西部劇のイーストウッドの吹替をやったのは、あの1本だけですよ。うーん、どうして僕がやったのかなあ……。正月番組(テレビ朝日系「日曜洋画劇場」放送)だったのは覚えていますが、特に理由もなく「納谷さんがやってください」って言われたんですよ。もちろん、山田康雄は生きているし、一緒の劇団にいるのにですよ(苦笑) 「なんで俺が? 嫌だ嫌だ」って言いながら結局やったんですが、やっぱり……ダメですよね(笑)。

─でもその吹替を聞きたいってファンもいるんです。そのバージョンの敵役が小林清志さんで、『夕陽のガンマン』の悪役も同じジャン・マリア・ヴォロンテが演じていて、こちらも小林さんです。同じ声優陣が参加しているということで、人気があるんです。

 役者がいないんだねえ、日本は(苦笑)。

2009年8月19日/於 オムニバスジャパン TFCスタジオセンター/聞き手:フィールドワークス 文:村上 健一

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