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平田勝茂インタビュー

1977年に第1作『スター・ウォーズ』が公開され、05年の『スター・ウォーズ エピソードIII/シスの復讐』で完結するまで約30年。全6部作にわたって全世界を魅了し続けてきた『スター・ウォーズ』シリーズが待望のブルーレイ化を果たす。吹替黎明期より日本語吹替版の翻訳に携わり、同シリーズでは第2作『~帝国の逆襲』から最終作『~シスの復讐』を担当。『コマンドー』『ダイ・ハード2』『スピード』と、20世紀フォックス作品とも馴染み深い吹替翻訳家・平田勝茂に、吹替版製作の醍醐味について聞いた。

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山田康雄とイーストウッドの微妙な関係~ 文:とり・みき(マンガ家/吹替愛好家)

 山田康雄さんのことを、ある程度の字数でもって語るのは、実はこれが初めてだと気づいて、ちょっと自分でも驚いている。そもそもマンガ家である筆者が吹替のことについて文章を書いたり書かされるようになったのは、95年刊の“とり・みき&吹替愛好会”と銘打った複数のライターによる共著『吹替映画大事典』(三一書房)がきっかけだった(あちこちでいっているが現時点から見ると取材不足やデータの誤謬も多いので、リファレンス用としてはもはやお薦めしない)。

 本来は、業界に精通している人が著したそうした本を読みたいと思っていた我々が、分際を省みず先の本を作ろうと思い立ったのは、長い間慣れ親しんできた声の出演者の物故が続いたからだった。しかし、やや遅きに失したというか、企画がスタートしてまもなく、我々は山田康雄の訃報をも聞くことになる。吹替をリードしてきた重要人物の一人として直接お話をうかがいたかったのだが、これはついぞかなわぬこととなった。自分の場合、基本的には出来るだけご本人に取材した話を優先して紹介したいと思っているので、今日まで山田さんのことを書く機会がなかったというわけだ。

 したがって、山田康雄の個人的なエピソードは、色んな方の著作やインタビュー、ご本人の雑誌・ラジオ・テレビでの発言以上の知識は持ち合わせていない。それらのうち幾つかはweb上でも読めたり視聴できたりするが、多くの方の証言から、故人の録音現場での厳しい姿勢がうかがい知れる。また、自分はあくまでも役者であり「声優として」扱われることが好きではなかった、というようなことも。

 本文に入る。山田康雄といえば。吹替映画では一にも二にもクリント・イーストウッドだ。筆者もまったくその点に異論はないのだが、以前、短い文章で「さして声が似ているわけでもなく、後期の作品では若干違和感も感じる」などと書いたら、山田イーストウッドに強い思い入れのあるファンの方々からお叱りを受けてしまった。筆者もまた山田イーストウッドのファン、という前提の上に書いた感想ではあったのだが、あらためてその根強い人気を認識したものである。

 ただ、年代にもよるが、上のような感想を持つ人は、筆者以外にも少なからずいた。これはイーストウッドがつい最近まで第一線の主演俳優で、その声も知られていたこと、山田康雄本人もまたテレビでよく顔を知られていたこと、加えて圧倒的人気キャラだったルパン三世とのギャップ、などが理由としてあげられるだろう。そして、先の私の感想は、実は誰よりも山田康雄自身が、テレビや雑誌のインタビューで、よく口にしていたことであった。

 とはいえ吹替はモノマネではない。声質は似ているに越したことはないが、それよりも役のイメージにフィットしているかどうかのほうが重要だ。さらに、吹替のキャスティングは、その役単体で決まるわけではなく、相手役との声の対比や、グループ全体のバランスを考えて配置されることも多い。山田康雄がイーストウッドのフィックスになったのは、テレビシリーズ「ローハイド」(NET=現テレビ朝日/59年~)で、主人公ギルの若き片腕・ロディ役に抜擢されたことがきっかけだった。

 他の配役はエリック・フレミング(ギル・フェーバー)小林修、シェブ・ウーリー(ピート)金内吉男、ポール・ブラインガー(ウィッシュボーン)永井一郎、ジェームズ・マードック(マッシー)市川治、スティーヴ・レーンズ(ジム・ケンツ)藤岡琢也など。余談だが小林修に上司やリーダー役が多いのも、このときのイメージが大きいのかもしれない。若年ながら老料理係ウィッシュボーンを演じた永井が、以後老人役が多いのも同様だ。なお、フレミングとイーストウッドはこの時に来日しており、小林・山田と対面している。

 「ローハイド」は人気番組だったので、筆者より上の世代には、このシリーズでイーストウッドの声は山田康雄、という刷り込みが出来たと思われる。これはテレビ「拳銃無宿」(フジ/58年~)のスティーヴ・マックィーンを担当した宮部昭夫が、そのまま後の長尺番組(洋画劇場)でもフィックスとなった経緯と同じだ。視聴者からすると最初に見たものが親になる。演じる側も、つきあいが長ければ、それだけ喋りの癖もよく掴んでいるし、画面の中の俳優が次にどういうリアクションを取るかまでわかってくる。どちらからいってもごく妥当な流れだったろう。筆者自身は年代と育った地域のせいで「ローハイド」を視聴したのはだいぶ後になってからだったが、「ローハイド」を知っている世代と「ルパン」から入った世代では印象が違ってくるのはしかたがない。

 だがしかし、吹替マニアにはよく知られた事実だが、実は「日曜洋画劇場」(NET)に最初に登場した『荒野の用心棒』(71年放送版)のイーストウッドは山田康雄ではなく納谷悟朗が担当していた(ジャン・マリア・ヴォロンテは小林清志、マリアンネ・コッホは渡辺典子)。放映局が違えば、ままそういうことはあるのだが、同じNETでなぜ? 以下は『映画はブラウン管の指定席で』(テレビ朝日編/86年)から引用した山田の言葉。

 「ローハイドのときには、ナイーブで、アメリカ青年代表というタイプだったのが、『荒野の用心棒』では非常に男臭くなって帰ってきました」「ローハイドのときはぼくも駆け出しのころでしたから、なんとなくスムーズに入れましたが、今度は少し違っていました。しばらく会わないでいたら、彼は彼なりの役者の道を進んでいたというわけです。ぼくとは全然違う方向へね」「ぼくは、のちの『ルパン三世』につながる“軽さ”の道を歩んでいたんです」

 納谷悟朗さんにも、過去のインタビューでお会いしたときにこの経緯をお聞きした。「ヤスベエもそういう意向だったし、プロデューサーも“強い男”のイメージを打ち出したくて、そういう役の多かった僕に振ったんだ。彼も納得済みだった。でもやっぱり視聴者にはヤスベエの印象のほうが大きかった。当然だと思うよ」

 以後「日曜洋画」は、73年の『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』では山田康雄のイーストウッドに戻し(この音源をベースにした“完声版”吹替が「夕陽コレクターズBOX」に収録されている)『荒野の用心棒』ものちに山田康雄で再録されることになった。これらの作品でセルジオ・レオーネは本来タバコ嫌いのイーストウッドにむりやり葉巻を加えさせ、そのためにあの苦み走った独特の表情が生まれた、という説があるが、筆者が個人的に気に入っている山田さんの声の演技も、葉巻を加えたまま絞り出すようにセリフを発する幾つかの場面である。

 こうして(夏八木勲のTBS版『荒野の用心棒』、樋浦勉の日テレ版『真昼の死闘』などという例外はあるものの)それからは『ダーティハリー』シリーズを始め、ほとんどのイーストウッド作品は、どの局であろうと存命中は山田康雄が務めることになる。こうした鉄板のフィックスに自負を持たないわけはない。テレビのインタビュー番組ではオーバーな表情で質問をはぐらかすシーンがよく見られたが、そこには一種の「照れ」や、東京人特有のひねくれもあると考えるべきだろう。同時に「ルパンやイーストウッドという固定観念でなく他の仕事も見てくれ」という想いもあったに違いない。

 ということで、次にイーストウッド以外の山田康雄の吹替の仕事を見てみることにしよう。まず重要なのは「コンバット!」(TBS/62年~)。奇しくも「ローハイド」と同じ時期にNHK-BSで再放映されていたので、若い人でもご覧になった方は多いと思う。筆者が山田康雄を山田康雄と意識して見た最初の外画が、この「コンバット!」であった。ノルマンディ上陸後東進する“第2小隊”の物語で、キャラの立ったメンバーによる群像劇が見どころ。そう書いてピンと来る方もおられると思うが、パトレイバーの第2小隊などもこのドラマの影響下のずーっと延長線上にある。

 配役はリック・ジェイソン(ヘンリー少尉)納谷悟朗、ヴィク・モロー(サンダース軍曹)田中信夫、ジャック・ホーガン(カービー)羽佐間道夫、ピエール・ジャベール(ケリー)山田康雄、ディック・ピーボディ(リトルジョン)塩見竜介、コンラン・カーター(ドク)嶋俊介といった面々。羽佐間さんにお聞きしたところでは、放映時期が長かったこともあり、吹替陣のチームワークもとてもよかったそうだ。ケリーは主にフランス語の通訳として活躍。セリフは少なかったが、この「フランス系」と「群像劇」というところが以下の話のポイントになる。

 山田康雄にこの役が振られたということは、そういう「声の感じ」があった、ということだろう。具体的に声質の特徴を聞かれると答に窮するが、ヨーロッパ的・フランス的な雰囲気をイメージさせる声、というのは確かにあるようで、例えば女優さんでは、ブリジッド・バルドー、ミレーヌ・ドモンジョ、アネット・ヴァディム、カトリーヌ・ドヌーヴを担当した小原乃梨子がまさにその代表格だった。同様に山田康雄もまた、ジャン=ポール・ベルモンドとジェラール・フィリップを、もっとも好きな俳優として挙げており、吹替も(とくにベルモンドは)数多く担当している。飄々とした山田自身のキャラにも合っており、ベルモンドのイメージが入っているルパンもまたこの系統といえるだろう。

 いっぽう、軽妙洒脱なフランス人俳優とは違って、アメリカ人では、ピーター・フォンダ(『イージー・ライダー』『悪魔の追跡』等)、ブルース・ダーン(『ファミリー・プロット』『笑う警官/マシンガン・パニック』等)、ロディ・マクドウォール(『猿の惑星』シリーズ)、テレンス・スタンプ(『遥か群衆を離れて』)、古くはロバート・ウォーカー(『見知らぬ乗客』)など、どこか狂気をはらんだ感じの俳優を担当することが多かった。やや震えたしゃがれ声が神経質さをよく表わしていたが、このへんの担当俳優の違いは興味深いところではある。

 最後に記しておきたいのが、ルパンを含めたこれら主役・もしくは準主役のときのイメージとは違い、順列でいえば3番目4番目くらいの脇役に回ったときの山田康雄の演技の端正さ、そして癖のなさである。全体のアンサンブルを考えメインの俳優の邪魔をしていないのだ。

 例えば『フレンチ・コネクション』(ジーン・ハックマンを小池朝雄、ロイ・シャイダーを羽佐間道夫、フェルナンド・レイを大平透)のトニー・ロー・ビアンコがそうである。そして、あの芸達者揃いのモンティ・パイソンにおいて、実はいちばん抑えたクールな演技をしていたのがグレアム・チャップマンの山田康雄だった(まあチャップマン自身が素っ頓狂な役を演じているときは違ったが)。他のメンバー=納谷悟朗、広川太一郎、青野武、飯塚昭三らとの対比を考えてのことと思う。

 しかし、これら他の俳優は、だんだん銀幕に、ひいてはブラウン管に登場することが少なくなっていき、結局いちばん男らしいイーストウッドだけが残った感じになっていった。

 山田康雄よりは2歳年上のイーストウッドだが、山田の現役中も大スタアではあったものの、映画人としてはむしろ山田の没後に名声を確とした感がある。こればかりはいたしかたのないことであるし、山田さん亡き後、声を担当した複数の声優さんにも失礼な物言いだが、ダーティハリー吹替版を担当したその同じ人物の「年老いた」声で『グラン・トリノ』のあのセリフを聴いてみたかった。

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ブラボー! テレビ版音源 ~カットがあったっていいじゃないか(なけりゃなおいいけど)~ 文:とり・みき(マンガ家/吹替愛好家)

 吹替に関する原稿を書くときに、いちばん迷うのが読者層の想定、というか把握です。
 というのも世代によって、またもちろんマニア度によっても「吹替」に対する認識は大きく違ってくるからです。

 Web上には私より吹替に詳しい方はたくさんおられ、よく当方のデータの間違いのお叱りなども受けたりするのですが(ありがたいことです)、しかし読者の大半は、例えばいきなりこちらが「フィックス」などと書いても、その意味も、また私や吹替ファンのフィックスへのこだわりも、ピンと来ない方々であろうと思います。ここでは、そういう人達にも出来るだけ吹替の面白さや歴史を認識してもらおう、という立場で書いていこうと思っています。吹替「評論家」でなく吹替「愛好家」と名乗っているのも、勉強不足の自戒とともに、そういう理由にもよるのです。

※ちなみにフィックス制というのは、映画は違っても同じ外国俳優の声は特定の決まった声優さんが担当するシステムのこと。ただし日本の場合は契約による厳密なものではなく、局やディレクターによっても違ってくる。

 さて、一口に吹替といっても、DVDに収録されている「日本語音声」には、大きく分けて以下の3種類があります。
 1. DVD用に新録したもの
 2. 公開時に作った劇場用吹替版を収録したもの
 3. 過去のテレビ放送用の音源を収録したもの

 1のDVDオリジナル日本語版は、新たに制作するという意味では確かに手間もお金もかかるのですが、音声制作時の予算だけを比べれば実はいちばん厳しかったりします。なので、テレビでおなじみのフィックス声優を揃えるのはコスト的にむずかしい。しかし逆にいえば、テレビではなかなか出番の回ってこない若手の重要な登竜門にもなっています。中には吹替に理解のあるスタッフによるオリジナル版ならではの好企画を打ち出す商品もあるので要注意。当然ノーカット。

 2の劇場用吹替版はシネコン時代以降の産物。いわゆるオフィシャル版ですね。オーディオ的にはいちばん計算されて作られており、もちろんノーカット。ただしオフィシャル版であるがゆえ、そつはないが遊びも少ない。また外国のディレクターが関与している作品では、元の俳優の声質や喋りの調子に合わせることが優先され、日本のフィックス声優を無視したキャスティングや、日本語として不自然な台詞まわしになっているものもときおり見受けられます。CGアニメ作品では宣伝優先で芸能人の吹替が多いのもご存知の通り。

 意外に思われる方もいるかもしれませんが、音声制作時の予算がいちばん潤沢なのが3のテレビ版です。それだけフィックス声優も揃っていて贅沢な作りになっています。以下に述べるように慣れ親しんだ名声優の全盛時の声の保存という点では大いに意味があるのですが、テレビ用にカットされたシーンは字幕表示に切り替わる、という欠点もあります。

 いきなり「欠点」などと書いてしまって、FOXの人の困った顔が目に浮かぶようですが、実は個人的にはこの3の吹替が入っているといちばん嬉しかったりします。
 若いユーザの中には「そんな(カット有りの)不完全な日本語版をつける意味ってあるの?」と思われる方もいるかもしれません。確かにユーザ側だけでなく、売る側にも「日本語音声もノーカットでないと収録する意味がない」と考える方がいるのは事実。それもまた一つの見識だと思います。昨今のデジタル技術で驚くくらいに補整されているとはいえ、古い時代の録音はオーディオ的に劣る、というディスアドバンテージもあります。

 しかし、そうした点を踏まえてもなお、過去のテレビ版音源の収録を切望するファンが少なからず存在します。DVD購入の判断材料に「テレビ版音源の収録」を上げる人も多い。先述したように私もその1人です。

 現在のように周りに普通にレンタル店があり、衛星放送やケーブルテレビでノーカットの外国映画が頻繁に流れている環境からは想像しにくいかもしれませんが、80年代の中頃までは、公開の終わった映画というのはリバイバル上映がない限り見るすべはありませんでした。とくに名画座もフィルムセンターもない地方都市では、唯一テレビで放映されるのを待つしかなかったのです。

 つまり我々の世代は、洋画はテレビの吹替版の「洋画劇場」で体験し学んだのです。
 再見どころか、ほとんどの作品が「テレビが初見」でした。

 いまでもときどき字幕派vs吹替派の不毛な論争を目にしますが、比較の条件としては、どちらもノーカット版であることがフェアな前提でしょう。古い時代のテレビ吹替版は、CMによる中断、放送時間に合わせるためのカット、さらには効果音や音楽まで日本側でつけた作品もあり、いわばオリジナルの加工品とみなされ、そもそも比較や評論の対象にすらならなかったのです。

 しかし。

 優れた音声スタッフが制作し演じた吹替版は、それでも原版に負けず劣らずの感動を我々に与えてくれました。
 吹替版しか見られなかったから吹替に甘い、ということではありません。むしろ逆で、だからこそ、出来の悪い翻訳や、違和感の大きいキャスティングや、声優の演技には厳しくなっていきました(オリジナル至上主義の人は、最初から吹替版を下に見ているのであまりそういう考えには至らないと思います)。そうやって自分にとってごひいきのフィックス声優も決まっていったのです。

 今回の紹介商品である『北国の帝王』の小林清志のリー・マーヴィンと富田耕生のアーネスト・ボーグナイン、『華麗なる賭け』の宮部昭夫のスティーヴ・マックィーンと平井道子のフェイ・ダナウェイなどは、私にとってその最たるものです。とはいえ、教条主義的にいつもフィックス優先というわけではなく「この作品ではこの声優さんが合っている」という発見もありました。
 世代論っぽくなりましたが、今だってそういうこだわりをもって吹替版を愛好している人は一定数いると思います。「ジョニー・デップの声は平田広明じゃなきゃやだ」という方は多いでしょう。

 往年のテレビ吹替にはもう少しマニアックな楽しみ方もあります。名をなしている声優さんはそれぞれになんらかの「芸」を持っています。原画の面白さを忠実に日本語で再現してくれるのが吹替の最優先事項ではあるけれど、原典プラスそういう吹替芸自体の面白さも楽しみどころのひとつです。

 とくに家庭用録画機などというものがあまり普及していない時代、テレビ版の吹替はオンエアとともに空中に消えてしまうものでした。当時は日本語版がソフトに「保存」され売られることなど誰も考えておらず、吹替にもそれゆえのゲリラ的な遊びがありました。たとえばバックショットやロングショットで、オリジナルにはない日本語的な言い回しのギャグをつけ加えたりするような。
 もちろん誰でも彼でも面白いわけではなく、原画の魅力も引き出しつつそういうことが出来る名人がいたのです。その双璧が広川太一郎と羽佐間道夫です。『大陸横断超特急』と『スペースボール』は、ぜひとも英語・日本語の両音声を聞き比べていただきたいと思います。

 さて、こうしてテレビ版で感動した作品は、のちに名画座やビデオやDVDでオリジナルにあたり「復習」することになるのですが、だからといってテレビ版の感動が薄れることはありませんでした。我々の世代の洋画ファンが『大脱走』のことを語るとき、それはたいていテレビの吹替版の視聴体験が元になっていたりします。元の映画がそれが制作された時代を映す鏡であるように、その吹替版もまた、忘れることの出来ない個人個人の時代の記憶なのです。

 極論すれば、個人的には多少のカットはあっても吹替はノーカットの新録版より、原画が制作された時代に近い当時のテレビ版で見たい、とすら思います。新録版は現代語に翻訳されすぎているきらいがあり、作品の持つ時代性が出ない場合もあるからです。またフィックス声優のお声や演技も、画面の中の俳優とあまり年齢差のない全盛時の録音をこそ聴きたいと思うのです。元の映画同様、吹替版もまたその時代の「作品」なのですから。

 残念ながら、なにせ商品化の発想自体が当時はなかったので、古いテレビ版音源の管理はしっかりしているとはいいがたく、行方不明のものも多いのが実状です。これからこのサイトで紹介していく商品の幾つかは、担当者があちこち探し回り(ユーザの協力なども得て)部分的な補完を重ねて収録したものもあると聞いています。映画界・テレビ界の貴重な記録であり、財産でもあるわけです。
 往年の「洋画劇場」世代は当時の感動の再体験を、若い世代は新しい発見をしていただければ、と思います。

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